最高裁判所大法廷 昭和34年(す)189号 決定 1959年7月01日
主文
本件忌避の申立を却下する。
理由
申立人毛利与一、佐伯千仭、彦坂敏尚および佐々木哲蔵は、本件被告人等の弁護人とは認められないから、本件につき忌避申立権がなく、同申立人等の本件忌避の申立は不適法である。
その他の申立人等の忌避申立の理由は別紙添付のとおりである。
申立の理由一、二について。
所論引用の文章および対談は、田中裁判官が日本国憲法の理念につき、または日本の一部に見受けられる社会現象につき、その所感を述べたに止まるものと認められ、所論のように、本件につき予断、偏見を持ち、審理前から暗に本件についての結論をほのめかし、原審裁判官や本件弁護人等を暗に非難する等、本件に関し不公平な裁判をする虞があると認むべき事由は何ら存在しない。
同三、四について。
本件は、大法廷に回付されることの予想された事件であるから、田中裁判官が所論のように、口頭弁論の開廷数等につき斎藤裁判官と協議したからといって、右は、本件進行について事実上の下打合せを行ったに止まり、田中裁判官が所論のように本件につき予断、偏見を有し、不公平な裁判をする虞があるものとは認められない。
同五について。
田中裁判官が所論のように、弁護人と面会しなかったからといって、同裁判官が本件につき所論のように、予断、偏見を有し、不公平な裁判をする虞があるものとは認められない。
よって裁判官全員一致の意見により、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一)